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土壌汚染事例集Q2:有害物質の地中拡散伝播経路は?

Q2(有害物質の地中拡散伝播経路問題):汚染物質は一体、地中をどのような経路で伝播して拡散しているのでしょうか!?

 特定施設を廃止して土壌調査を行いました。特定施設のコンクリート基礎の直下の砕石層付近を中心に、地表面から深さ1メートルまでは特定施設で使用していた有害物質が発見されました。

 その更に下方の地盤からは深さ9メートルまでは土壌汚染が全く発見されず、深さ9メートル以深にある地下水からは、かつて使用していた特定有害物質が深さ15メートル付近にある岩盤までの深さで、かつ広域に下流域に渡って検出されました。

 不思議なことに、最も深い岩盤部付近の地下水の汚染濃度が極めて高いことが分かりました。汚染物質は、深部に伝わるに従って、徐々に薄くなっていくように思いますが、深度が深くなるにつれて、濃度が濃くなるなどという”気持ちの悪いこと”があるのでしょうか。

 特定施設から漏洩した有害物質は、どのような経路を伝って地中を伝播して深部にある地下水だけを汚染したのでしょうか。・・何か、納得のいく説明が付きそうでしょうか。

A 有害物質(ハザード)を内包する貯蔵施設等から、何らかの外力(地震力や重機械等による圧力)や内力(埋設配管等の圧送圧力)や腐食や劣化による直接原因(ペリル)が作用することによって、貯蔵施設等が劣化破損して開孔部が出来れば、有害物質が漏洩する契機(トリガー)が発動します。

有害物質が貯蔵施設等の容器等の外へ漏れ出て漏洩(アクシデント)して、地中に移動・拡散していきます。地中の土粒子と土粒子の間のより大きな間隙を伝って有害物質は、重力に従って地中深部に移動していきます。

地中では、粒径の大小様々な土粒子が圧倒的に中心的な構成要素です。粒径の大きにより巨石、玉石、砂利、砂、シルト、粘土等々に分類されます。田畑の土は団粒構造が特徴です。それらの土粒子の間には間隙というスペースがあり、地下水位より上方では地中空気で、地下水位より下方では当然地下水で満たされています。

地中に漏洩した有害物質は、これらの間隙の内、より大きなサイズの間隙を伝って主に重力に引っ張られて地中深部に移動することになります。したがって、有害物質は、万遍無く地中に拡散するのではなく、大きな間隙や地中のスペースを伝って偏在するということができます。

地下水位に達して有害物質は、比重が水より軽い油分等は水平方向に水面付近を拡散し、比重の重い物質は難透水層に達するまで鉛直下向きに流下します。そして、難透水層の上面に滞留蓄積して「高濃度汚染部」を形成します。

その一方、地下水に僅かずつ溶解しながら地下水流がある場合には、地下水流の下流方向に向かって移動することになります。このように挙動する有害物質は、有害物質の漏洩箇所から鉛直方向に流下して、地下の大深度部に高濃度部を形成することになります。

土壌汚染調査を行ってもほとんどの土壌に汚染がみられず、その一方で地中深度部の地下水から、極めて高濃度の汚染が検出される事例はこのような挙動を採っている場合が多くみられます。

なお、高濃度汚染部に滞留蓄積して飽和した有害物質は、更に下流域の新たな高濃度汚染部を求めて、移動・拡散・集積していくことになります。

(鈴木経営工学コンサルタント 相談役 鈴木茂)

 

 

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